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小樽〜羽幌


6月10日

荷物をまとめ、さあ出発。普通二輪免許をとって一ヶ月、初めてのロングツーリングである。しかも舞台は日本最北の地、北海道。故障したらどうしようとか、林道で身動き取れなくなったりとか、クマとこんにちはしたらとか色々不安はあるもののとりあえず前に進む事だ。
京都の家を出て3時間ちょっと、夜10時頃敦賀のフェリーターミナルへ到着。手続きを済ませ中にはいると結構豪華じゃないか。予約している2等たこ部屋も清潔で、人も少ないし今日は快適に眠れそうだ。大き目の風呂に入ってゆっくりくつろごう。

小樽運河


6月11日

元々は海外旅行が好きで、この2月3月もタイ、ラオス、オーストラリアへと行ってきた。しかし帰国後しばらくしてちょっと考えが変わった。帰宅して早々に友人を京都案内する機会があり、いくつかの寺社や景勝地を歩いたのだが、見慣れているはずの景色がこの時なぜか全く違う、新鮮なものに写った。オーストラリアの豪快な自然とはまた違う、非常に微妙な美が感じられ妙に感心してしまった。もう一回日本を見て周りたくなり、さっそくバイクの免許を取った。そして今、この北海道。ここは他の日本の地域と自然や文化の面で少し違うかもしれないが、沖縄とともに国内旅行者の憧れの的だ。はずす訳にはいかない。
夜8時半小樽着。フェリーを降りると空気がいささか冷たい。やっぱり北海道だ。今日はもう遅いので予約しておいたとほ宿「ぽんぽん船」 (一泊3千円、食事なし) に投宿する。オーナーの松岡さんはハンサムな好紳士で、みんなで酒を飲んでいる時自作の歌をピアノ弾き語りとともに披露してくれた。その後はこれまた松岡氏が考案した「旅人ゲーム」で遊ぶ。これは一種のカードゲームで、参加者は「宿」「足」「食事」の3種類のカードを面前にそろえた後「名所」カードを繰り出しあがる。誰か一人があがった時点での合計得点で順位を競うというルールなのだが、ゲームの要所要所で旅人にしかわからない言い回しがあったり、そもそもゲームの構成自体が旅人の価値観をもって作られているので(たとえば「人生ゲーム」などでは結婚はプラス材料となるが、旅人ゲームではそれは旅の終わりを意味するためマイナスポイントとなる」)たいへんマニアックな仕上がりとなっている。


6月12日

昨夜「旅人ゲーム」で夜更かししてしまい、きれいな日の出を見損なった。まあこの時期日の出は3時半頃らしく、寝たのが3時頃だからいっそ起きてた方が良かったのだが・・・それでも遅めの朝に宿の屋根に登って真っ青な空と小樽の街並みを眺めていると、北海道にいるという実感が湧いてきて犬のようにしっぽを振りたい気持ちになった。
隣友朝市で土産の時鮭とたらばを買いに行った。鮭は予想通り馬鹿高い。4キロ強で1万6千円以上する。さらにこの日は土曜日で適当な魚が少なく、結局魚屋のおばちゃんに金を先渡しして次の月曜日の競りで落としてもらうことにする。「頼むでえおばちゃん、ええの買うてきてや、信頼してるさかい」「まかしとき。おばちゃんの目は確かだから絶対損はさせへんよ。思い切り行きのいいヤツを送ってあげる」そして送り先を書いて市場を出た。その後この鮭のおかげで送った先の両親が死ぬ目に会うことになる。鮭に問題があったのではなく両親が生のまま刺身で食べてしまったので寄生虫が胃腸壁に噛み付いて二人とも病院行きとなったのである。鮭は刺身で食べる場合は一度凍らしてルイベにしてから解凍して食べないといけないのだ。まあ鮭が新鮮すぎて中の虫クンも元気一杯だったに違いない。
ともかく小樽を出て本格的に旅が始まった。日本海沿いの国道をひたすら北上。石狩、雄冬、増毛、留萌と走り抜け、今日の目的地、羽幌まではもうすぐだ。風爽やか、強めの日差しが心地よし、トンネルに入ればひんやりと冷蔵庫の如く、バイク旅行は体で自然を感じる事が出来る。羽幌に着いたのは夕方、とほ宿「吉里吉里」(一泊二食5,500円くらい)に投宿。ボリュームたっぷりの晩飯で評判の高い宿だ。オーナーの坂本氏は大変気さくなバイク好きのお父さんで、バイクの事を色々教えてくれたり、絶好の夕日鑑賞ポイントに連れていってくれたりした。

留萌海岸


6月13日

羽幌からフェリーで一時間半の焼尻島、天売島。今日から一泊二日の予定で出かける。小さい島なので バイクは吉里吉里に置かせてもらう事にした。前日知り合った和歌山の小西氏と一緒だ。小西氏、船に乗っていきなり酔い始め、かわいそうだがどうしようもない。じきにつくから我慢してくれ。
焼尻島はオンコ、ミズナラを中心とした原生林が素晴らしく、約5時間の滞在の大部分を森林歩きに費やした。森林の保存が良いため、島の周囲の海も大変きれいでダイビングポイントもいくつかあるらしい。焼尻郷土資料館を見学して天売島ゆきフェリーにのる。これは15分ぐらいなので小西氏が酔う暇も無く到着。足がないのでとりあえず島を歩いて回る事に。3時間近くかかり約12kmの道のりをこなしたがこれが結構しんどかった。 小西氏はそれほどでもなさそうだったが、後からもらった手紙では「まさか島内一周するとは思わなかった」と書かれていた。おもえば彼は体育会系の年下。こちらが歩き出したら着いて来ない訳には行かなかったのだろう。船酔いも治まってなかったろうに申し訳ない事をしてしまった。結局この日は20kmほど歩いた事になる。
この時期天売島でもっとも有名なのがウトウのナイトウォッチングである。ウトウは北太平洋に分布する海鳥であるが、これがこの季節大挙して巣を作り(80万羽とか言われている)、夕方になると魚をくわえて巣へ戻ってくる。この光景を間近で見れるのだが、さらに面白いのはウトウがくわえている魚をウミネコが掠め奪ろうとして、奪われるまいとするウトウとの間に争奪戦が繰り広げられる事である。あまりに熱中して見ていたためカメラカバーが風で飛んでいってしまった。残念ながら島のトレードマークでもあるオロロン鳥は見れなかった。


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