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釧路〜阿寒湖


6月26日

昨夜病院から帰ってきて、「MOSHIRI」ライブを見た。MOSHIRIとは曲はアイヌの古式舞踊・歌謡をベースに、ミュージックデザイナー(兼社長)のATUY氏が全曲プロデュースしている。メンバーのほとんどがアイヌ系の人々で、昼間はドライブイン&民宿「丸木舟」や阿寒湖コタンの喫茶店「宇宙人」、および民芸品店で働いているのだが夕方になると集まりはじめ、夜8時半にライブ開演となる。約一時間強の公演中、耳と目はもちろん、体全体が反応するような素晴らしいパフォーマンスだった。また私が最も共感できたのが「自然との共生」「異文化への理解」という彼らのメッセージが音楽とともにびんびん伝わってきた事だ。ATUY社長は「俺の音楽は金もうけの手段ではなくて、神神と対話する為のもの」と言い、CD自主制作(12枚も出している)、自店での店頭販売中心というやり方を採っているが、MOSHIRIが発するこの二つのテーマは今後世の中でますますクローズアップされると思うし、この問題を避けて通れば日本に未来はないとさえ言える。私としてはMOSHIRIがメジャーになって、その素晴らしいサウンドとメッセージをばんばん発信してシサム(アイヌ語でよき隣人=日本人)に伝えてほしいと考えるのだが・・・


6月27日

もうバイクには乗れない。かといって公共の交通機関では自由に動きづらい。ということでこれから数日間はヒッチハイクで移動する事にした。バイクを「丸木舟」に預かってもらい移動開始。幸い北海道の人々は旅人にやさしく、この日も屈斜路コタン→弟子屈、弟子屈→阿寒湖と2回やったがどちらも10分も待てば止まってくれた(外人に言わせれば日本そのものがとてもヒッチハイクしやすい国らしい)。阿寒湖のコタンに到着してまずはライダーハウス(右)にチェックイン。ここは名前はない(と思う)がアイヌの山本氏が管理している家庭的な雰囲気の宿である(一泊500円)。特に気に入ったのは薪ストーブ。ここ数日天気が悪く寒い日が続いているのでストーブはありがたい。山本氏はコタンで開催されるアイヌ古式舞踊にも出演しており、これが1時間〜2時間おきに30分ずつ開催されるのだが、その合間をぬって手作りの食事を出してくれたりしてとてもやさしいおじさんである。
この日宿には先客が3人おり、彼らに車で近くのオンネトー(湖)と湯の滝温泉に連れていってもらった。オンネトーは阿寒湖より美しいと言われている小さな湖だが、この日は曇り空で日も暮れかかっていたのであまりよくわからなかった。


オンネトー(左)とそのそばの湯の滝温泉(右)


6月28日

阿寒湖のコタン(写真右)で一日中ゆっくりして過ごす。喫茶店「宇宙人」(屈斜路コタンのドライブイン「丸木舟」と同系列)で本を読んでいると社長のATUY氏が入ってきた。しばらく氏と話をしたが、本当に面白い人である。氏は16才で家を出、ギター片手に世界を放浪しながら自らの音楽を確立したという。面白い事に今でも氏は譜面を読まないらしい。MOSHIRIのレコーディング時においても、メンバーに「風になって演奏しろ」みたいな指示の仕方をすると言い、レコーディングの方法も「宇宙人」や「丸木舟」内での一発同時録音である。なんともすさまじいやり方であるが、坂田明氏(ジャズ奏者)や岩間信夫氏(レコーディングエンジニア)などの著名人もレコーディングやライヴ、ツアーに参加している。漫画家の赤塚不二夫氏や哲学者の梅原猛氏などとも親交が深く、一般のファンの中にも毎年ライヴを見に北海道まで足を運ぶ人も多い。一見するとうさんくさそうなおやじ風だが、話すほどに魅力を感じてくる不思議な人である。


6月29日

同宿の旅人/釣り人である坂本さんが釣りに誘ってくれた。今日で阿寒湖三日目。そろそろ飽きてきたところだったのでうれしい誘いだ。朝6時から阿寒湖の隅っこで釣りはじめた。幸先よくウグイが釣れたがその後はぴったりと引きが止まった。餌は魚肉ソーセージしかなくまあこんなもんかな。しかし水面では結構大きそうなのがばしゃばしゃとび跳ねている...よく見ると魚は水面にいるカゲロウを食べているのだ。そこでクモの巣に引っかかっているカゲロウを捕まえて死なないように尻に針を通し、浮きも外して再度投げ込んでみた。カゲロウはうまい具合に小刻みに波紋を作りながら水面を移動しだした。とその矢先ばしゃと大きい音がしてぐぐぐと竿が引っ張られた。作戦成功。上がってきたのはイワナ。北海道ではなんとイワナが湖で釣れるのだ。結局この日イワナ5匹を釣り、ライダーハウスへ持帰り塩焼きで食った。もちろんうまい。


阿寒湖(左)とオンネトー(右)


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