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幌延〜枝幸


6月14日

そう言えば昨日天売島で妙な物を見た。港の近くにパターゴルフ場があったのだが、各コースいたる所にひもが張ってあり、そこに黒い布切れが垂れ下がっている。「ははあ、カラスよけだな、そういえば俺も昔営業マンの頃ゴルフ場でカラスにボールを持っていかれた事があったな」などと思いながら近づいてみると、なんとそれは本物のカラスだった。カラスが縛り首にされてゴルフ場のあちこちで吊るされている。かなりの数だ。これはかなり不気味である。さらに近づき顔を覗き込んでみると、大分昔に吊るされてほとんど干物になってるものや、比較的新鮮で生きのいいやつもいる。あとで近くのおばちゃんに聞いてみるとやっぱりカラスよけで、見せしめ効果を狙っているらしい。ここまでするとはゴルフ場側もよっぽど奴等の行状に腹を据え兼ねて居るのだろうが、果たしてこんな気味の悪い所でパターゴルフに興じる人がいるのかちょっと疑問である。
ともかくフェリーで羽幌へ戻り、昼過ぎに再び北上開始。天売国道をまっすぐ走りながら、舗装路に飽きたら左側の海岸沿いダートや右側の林道に寄り道しながら稚内へ向かう。なんだこれは。走るのがえらくおもろいぞ。こんなに楽しい事を今まで知らなかったとは俺は今まで何をして生きてきたんだろう??、と大袈裟に言いたくなるぐらいのこの日のRUNである。走っては泊まって写真を撮ったり寄り道したりしていたら結局日が傾いてしまい、かなり手前の幌延でテントを張る事になってしまった。


6月15日

怪しい雲行きだと思っていたら案の定降ってきた。キャンプの時に降られるとむちゃうっとうしい。急いでテントをたたんで出発するが走っているうちにだんだん本降りになってくる。覚悟を決めて走り続けるが前輪が跳ね上げる水が靴に直撃しざぶざぶになった。ヘルメットも曇って前も見にくくなるし、バイクは天気の時は最高だが天気が悪い時は最悪の乗り物となることを実感した。まだそれほど寒くない事が救いか。
雨の中、幌延ビジターセンターに立寄り下サロベツ原野の探索路を歩いてみる。花は満開ではないが、雨が湿原の緑をいっそう引き立たせ、歩いていて大変気持ちの良い場所だ。大湿原に雨、なかなかの相性だと思う。探索路は長沼沿いに伸びており、往復したら一時間以上かかり、さらに濡れねずみとなった。幌延を出た頃から雨が小降りになりはじめ、遅めの昼飯を食う頃には完全にあがった。コンビニで買った弁当を横の駐車場で食べていると、おばちゃんが椅子やらお茶やらを持ってきてくれ、近所のおじさんも珍しそうに寄ってきて、色々話し掛けてくれた。
四時ごろ稚内に着く。今日はライダーハウス「みどり湯」で泊りだ。銭湯に併設していて、世話好きのおばちゃんが銭湯とライダーハウスの両方を見ている。銭湯が終わる9時頃からは希望があればカラオケ大会も開催してくれる。部屋も大きくて清潔だしここはなかなかいいんじゃないかな。ライダーハウスに泊まるのは初めてだがこれなら熟睡出来そうだ。宿泊料は800円ぐらいだったかな?


6月16日

朝イチでノシャップ岬へ。昨日は全く見えなかった利尻富士がくっきりと見える。今日は朝から快晴だ。大沼でバードウォッチングの後、宗谷丘陵へ。国道238号線から丘陵へ上る道道へ入る。入口に「熊出没6月○日」の注意書きがありちょっとびびるが構わず駆け上がる。ツーリングには最高のワインディングロードだ。しばらく走ると左手にダートの道が延びており、吸い込まれるように入っていく。その道は丘陵のど真ん中に続く半グラスロードとなっており、こんな風景が日本で見られるのかと目を疑うほどの大パノラマが姿を現しはじめた。空・海・草原の三層が天然のサンドイッチとなって眼前に横たわる。思わずうがあああああああと叫んでしまう。それほどの強烈な景色だ。バイクを止め、丘陵の真ん中で1時間ほど景色に釘付けとなってしまった。それから宗谷岬に下り、一転南下開始。左にはオホーツクの大海原。カムイト沼(これも素晴らしう幻想的な沼)、モケウニ沼を経てベニヤ原生花園へ。草の茂みから子ギツネたちがこわごわ顔を出すその脇をすり抜け、約5kmの直線ダートをこなすと、かにの町・枝幸の街並が見えてきた。今日の宿泊は枝幸YOUライダーハウス。ここも銭湯隣接の宿で一泊300円だ。スタッフもバイク乗りで、バイクの事を色々教えてくれるフレンドリーな雰囲気。メシの後、スタッフの一人である阿部さんが明日近くの林道に連れていってくれるという。オフローダーにとっては本当にうれしい宿である。


6月17日

阿部さんに近くのケマモナイ林道へ連れていってもらう。じゃりダートをばりばりのオフローダーに着いていくのは大変だ。何回もコースアウトしそうになりながら彼の走った砂埃の後を追ってゆく。プロはこんな道を時速100km以上で走り抜けるというがどんなバランス感覚を持っているんだろう。途中の川で休憩をとり、次は線路にトライだ。廃線になった旧国鉄の線路の上をトコトコと進んでいく。深じゃりで何回もタイヤをとられなかなか前に行かない。結構難しいもんだ。線路を抜けると次はモトクロスの練習コース場に出た。地元のライダーが手作りで仕上げたコースで、走るとムチャクチャ面白い。ウォッシュボードではロデオの様にマシンに振り回され、ジャンプ台ではフロントから着地して怖い思いをしたが何とか2周走った。そして正午に宿へ戻る。バイクの面白さと難しさが体に刻み込まれた半日だった。
疲れてはいたが、せっかくなので午後も走りに出る事にする。今度は一人でまた別の林道を攻める。風烈布林道を走りたいのだがどうも道を間違えているようだ。まあいいか、いずれ合流するだろう(あとで地図を見ると上音標津音標津線という道だった)。この林道も大変美しい道で、両側には白樺林が生い茂り、それがやわらか目の日差しと絡んで道全体が光と緑のモザイク調となっている。その中をバイクでぶるぶる走っていくのは、何ともいえない陶酔感がある。天の川トンネルのところで引き返し、こんどは本物の風烈布林道を通って宿に戻る。
夜は阿部さんら宿のスタッフを一緒に飲んだが、そのときつまみに出してくれた糠ほっけやアイヌねぎ(ギョウジャニンニク)の味噌和えが美味く、調子に乗って一升以上飲んでしまった。話し込んでいるうちに、気がつけば北海道の気のはやい太陽が顔を出していた。


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