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8月26日 フィンランド  Koivu / キャンプ場+サウナ (70FIM)

 朝食をユースの従業員におごってもらった。この男は世界のテレホンカードを集めるのが趣味だそうで、日本のはまだ持ってないから、帰ったらそれを送るという条件だ。「来年の話になるぜ」と言ったんだがそれでもいいらしい。でもこっちが忘れそうだ。

もう一つこのユースでの出来事は、ノルウエーの西岸の町、トロンドへイムのユースで知り合った台湾人家族と偶然再会した事。
 トロンドへイム以来、彼らは北へ、俺は東へ向かっていた。そして今朝はスウエーデンの東海岸の町。彼らは南下の途中、俺は北上開始しようというタイミングだ。ロンドンに半ば住み着いて商売をしているパパが、台湾にいる奥さんと二人の子供を呼んでレンタカーで旅してるのだ。
 聞くと彼らは、一週間で殆ど北の果て近くまで走ってきたらしい。ええよな車は寒くなくて。
今度は俺の旅の最後の方で、彼らの地元で会えるかもしれないな。

 今日はここ一週間とはうって変わって暖かく、天気もいい。多分20度以上あるだろう。そして風もなく、ここ最近味わってなかったような絶好のツーリング日和。これを逃がしてなるものかと今日はがんばって500キロ近く走った。途中、発進時にチェーンががたがた言い出したので少し張り、オイル交換もしていざフィンランド入りだ。

ホントにもう秋みたいだろ
いつものように建物はでかいが人はあんまりいないイミグレを素通りしてフィンランドに入ったのは午後7時前。ただしフィンランドは一時間進んでいるので午後8時。国境から100キロ弱走ったところで暗くなり始めたので、道路沿いにあったキャンプ場に転がり込む。
レストラン内に受付があり、手続きをしていると、いかにもフィンランドっぽい平べったい顔をした酔っ払いが近寄ってきて何かしゃべりかけてきて、受付のおねえちゃんに「シッシッ」と犬のように追い払われてたのがユーモラスでおかしかった。

ここのキャンプ場にはなんとサウナが!さすがフィンランドである。メシを食って、さっそく入ってみた。日本のサウナとまったく同じだが(というか日本が真似してるだけだが)、本場の国で入るというのはやはり気持ちのいいもんだ。ただしテレビで見たハッパのついた枝(これで体をたたく)は置いてなかったのが残念。でもこれからも何度か味わえるかもしれないな。楽しみだ。



8月27日 フィンランド Inari / Holiday Village Inari キャビン(120FIM)

ハイウェイ75号をひたすら北へ走る。キャンプ場から30キロほど行くと北緯66度33分、北極圏内に入った。お約束のように、ここには土産物屋や遊園地、そして郵便局もあった。その名も北極圏郵便局(Arctic Circle Postoffice)。ここにはポストが二つあって、黄色い方は普通のポスト、赤い方に入れるとクリスマスにあわせて届くようになっている。さすがはサンタクロースの国、なかなか粋なことをやってくれるじゃないか。でも間違って投函してしまって、忘れた頃に届くなんて事になった人も沢山いるに違いない。あと別に申込書を書くと、クリスマスにサンタクロースから直接メッセージが届くというサービスもあった。

北極圏に入っても相変わらずあたたかい。植生も南部地域とそんなに変わったような気配はなく、同じようにシラカバのような落葉樹林が続いている。北極圏がこんなに暖かいとは思わなかった。どれくらい暖かいかというと、バイクジャケットの上にカッパを着込まなくてもいい、そして薄手のグローブで走れるぐらいだ。7月に行ったスコットランドとかこの前のノルウエー南部では常にカッパと冬用グローブをしてた。寒ければ北極圏に足だけ突っ込んで引き返そうと思ってたんだが、これは以外に北までいけそう。

ムースの時と違って今度ははっきり捉えられた
それでもさらに北へ進むにつれ、シラカバ林が姿を消し、代わりに松とかの針葉樹林になってきた。まあどっちにしてもどこまで行っても森林だらけ。そしてスウェーデンと同じくすごい数の湖。ときどき寄り道して林のダートに分け入ってみると、リスとかが慌てて木に登っていくのが見える。
 そしてさらに北上を続けていると、見た。

道の200mほど先で、でかい動物が移動している。俺は最初馬だと思ったが、近づくにつれ、それが大きな角を持ったトナカイだと言う事が分かった。トナカイ!テレビとかでは見た事あるが、生で見たのははじめてかも。角の他に目が特徴的で、ちょっと飛び出たような、変わった目をしている。
 そのトナカイは道を横断中の何頭かのしんがりだったようで、道の脇の林には6頭ほどのトナカイがじっとこっちを見ている。すわ写真、と思ってカメラを取り出すと、トナカイは警戒して林の奥に消えていった。
 その後も何度となくトナカイを発見した。これらのトナカイは多分全部放牧?のトナカイで野生ではないと思う。なぜなら時々首輪をはめたのやちりんちりん羊のように鈴を鳴らしながら歩いているのもいるから。ヨーロッパでは野生のトナカイは殆どいないらしい。それにしてもこんなに放し飼いにしといて持ち主は心配ではないのかな?

今日はイナリという和風の名前の町に宿泊。テントを張っても良かったんだが、キャビンというのもなかなか魅力的だ。キャビンはこの旅行ではまだ使った事がなかったので、一度泊まって見ることにした。でもテントを張っても問題ないぐらい、夜も寒くないよ(北緯68度ぐらい)。

8月28日 ノルウエー Polmak /キャビン (200NOK)

朝、小便に起きたら偶然日の出に出くわした。
慌ててシャッターを切った
フィンランドの北部はラップランドと呼ばれ、サーミ人という少数民族が多く住んでいる
イナリはその中心的な町であるらしい。とてもそんな風には見えない小さい町であるが・・・
今日はそのイナリを観光してみた。
 まず観光案内所で情報を仕入れ、荷物を預けさせてもらってバイクで周ることに。大都市観光の場合は信号や一方通行が多くバイクでは苦しいが、これくらい小さい町だとバイクの方が効率的。

まずはSIIDAというミュージアムへ。オーロラの数々の写真やラップランドの自然、サーミ人の生活や歴史について、文字と展示物、写真、パネル、ビデオなどを組み合わせ、かなり内容が濃い。興味のあるところを飛ばし読みしていったが、展示物やビデオを見るだけでも十分楽しい。
 ここで予備知識を得た後、今度は14キロ郊外の森の中にある、Inarin Polofarmiというサーミ文化の体験プログラムへ行ってみる。
 プログラム開始は12時からだが、時間になって誰も来ず、客は俺一人。サーミの民族衣装を着た真面目そうなガイドのおねえちゃんとマンツーマンの"授業"となってしまった。

最初はトナカイの餌やり。受付から2百メートルほど森へ歩いたところに数匹のトナカイが待っていた。そしておねえちゃんから貰った餌を手のひらに乗せトナカイに食わせる。手までハグハグされおっかなかった。
 昨日は遠くからの写真撮影だったが今日はこんなに近くで見れる。オスの立派な角には実は毛がふさふさ生えている。トナカイはメスにも角があるが毛ははえてない。そしてすべてのトナカイの耳はゴッホまたはホリフィールドみたいにナイフで少しずつカットされている。
 これはカットの形状によってトナカイの持ち主を識別させるためで、サーミ人にとっては非常に重要なマーキングなのだそうだ。家ごとに決まったカットの形状を持ってるので安心して放牧させられる。道理で昨日そこらへんの道端にトナカイがうろうろしていたわけだ。聞くとやっぱり野生トナカイはいないらしい。
トナカイの用途は食肉、皮革製品、乳(脂肪分が多く主にチーズ用)である。

おねえさんの餌に群がるトナカイ
餌やりの後はカウボーイのようにロープを投げてトナカイを捕まえる練習。それからのサーミの衣服や生活道具の見学と説明。冬用の靴やグローブ、そしてズボン、コートすべてトナカイの皮で作られていてとても暖かそうだ。寒さ対策に苦労している俺のバイク服と交換してもらいたいぐらいだね。
 その後サーミの伝統家屋に移って彼らの伝統音楽「ヨイク」を聴く。歌い手はまた別の女性。ヨイクのメロディーは非常に力強い。そして女性の声も太く、そして高い。打楽器を自ら打ち鳴らしながらテンポよく2曲歌ってくれた。

その後しばらくお茶を飲みながらガイドのおねえちゃんと話した。
それによると、フィンランドのサーミ人は約7000人、ノルウエー、スウェーデン、ロシアなどにも住んでおり、全部あわせると8万人ほど。ルーツはアジアで、顔もアジアの顔だ(ただし今は混血が進んでおり、だいぶヨーロッパ的になっている。写真で見た昔のサーミ人は我々とよく似た東洋人だ)。イヌイットその他の世界の北極地域にに住む少数民族も多くはアジア系だが、地球儀を真上から覗くとアラスカもスカンジナビアもグリーンランドもシベリアも北極海を挟んで実はお隣さんだと言うのがよくわかる。
 山に住むサーミ、海に住むサーミ、森に住むサーミと地域によって生活様式や言葉も違ってくるが、多くは他のヨーロッパ人と同じような生活をし、言葉もサーミ語を日常語として話している人はそれほど多くないそうだ。このへんは日本のアイヌ民族と似ている。ノルウエーの北部では今でも「夏の場所」と「冬の場所」を移動しながら暮らしているサーミもいると言う。
 ガイドのねえちゃん自身は、お父さんがサーミ人、お母さんがフィンランド人で、家の会話はフィンランド語、サーミ語は聞いてだいたい理解できる程度らしい。「英語、ドイツ語の方が断然しゃべれるわ。」と笑っていた。

北緯70度地点の風景
その後土産物屋を見て周ったり、ホテルのレストランでトナカイ料理を食べたりして(まあまあ)、だいたい見終わると既に4時過ぎ。もう一泊しようかと思ったんだがスケジュールが遅れ気味になってるので少しでも先に進もうと北上再開。
 ハイウェイ75号をさらに北へ取ると、200キロぐらい走ったところでノルウエー国境になった。俺は最初はフィンランドをとことん北へ行くと海になるのかと思っていたが、そうではなくて、実は左の方からノルウエーが名前の通り、フィンランドの上にのしかかっている。そしてフィンランドを通り越して東のロシアと国境を接しているのには驚いた。
 ハイウェイ75号と縦に交差している大きな川が国境になってるようで、イミグレは橋の手前にある。そしてハイウェイはそのまま橋を渡ってノルウエー側で川に沿って右(北東)に進んでいる。川を挟んだフィンランド側でも細い地道が川に沿って北東に進んでいる。どっちの道を取っても同じ方向に進むんだが、俺は橋を渡って国境を越えず(本当は一度越えたが戻ってきた)フィンランド側の地道を取った。

イミグレから約30キロ走ったところで北緯70度に到達した。これは俺がひそかに目標としてた北限なのでけっこう充実感がある。夕方遅くになってにわかに曇りだしたため少々冷え込むが、それでも辛いと言うほどの寒さではない(この地域は今日の日中20度もあったらしい)。
 70度地点でバイクを停めて左側に流れている川を見ると、小さな船で網を引いているのが見える。たぶん川に住むサーミだろう。
 そんなこんなしてるうちにぽつぽつ雨が降り出し、辺りも相当暗くなってきたので、次に見つかった宿にチェックイン。
 この宿は大変面白いつくりの宿だが、今日は沢山書きすぎたので又明日。


8月29日 ノルウエー Polmak /キャビン (200NOK)

一瞬、「えっ、これが?」と思った
いややねー。また雨やねー。
 午前中は降ったりやんだり。でもって午後になってやんだように見せかけて、俺が外出するとすかさず降りだす。ったく、いやらしいやんけ。
 そうそう、今泊まっている宿のことだけど、とっても面白い。そして快適。
写真でわかるるように、外から見れば土を盛った小さな塚のようなマウンド風で、草も生えている。そして中に入ると全木造のログキャビン風だ。入り口から右側がベッドルーム、左側はキッチンとダイニングルーム、その間に(すなわち入り口をあけると真ん前に)バスルーム。
 キャビン全体がドーム状になっていて、中にいるだけで楽しい気分になる。中にいるだけで楽しいと言う宿もそうそうないと思うよ。
 チェックインした時に宿のおばさんに聞くと、むかしのサーミ人の住居を現代風にアレンジしたという。デザインはおばさんが全部したらしい。同じ形のキャビンが敷地内に5つほどあって、その真中にひときわ大きな土盛りドームがレストランだ。
はっきりいって、えらく快適。BBSには今日は雨だからもう一泊と書いたが、晴れててももう一泊してただろうな。
夕暮れ時には雨あがり、最高の夕焼けが見られた。
太陽が横に動くだけあって、夕焼けも長い、
そして一日のうちでいろいろな夕焼けの景色が見える
 気になるお値段の方は200クローネで朝食つき。安いもんだ。
昨日最初に部屋を見せてもらった時、おばさんははじめ350クローネだと言った。俺はその時点ですでにこの宿が気に入り、この値段でも泊まるつもりでいたが、一応困ったような顔をして「もうちょっとなんとかしてくんなはれ」と言ったら、あっさり200クローネに大幅値下げしてくれた。最初の値段はいったいなんだったんだ??
 それにしてもこれだけ素敵な宿で200クローネ(約2400円)とは・・・日本なら間違いなく1万円以上するだろう。ヨーロッパ、特に北欧は物価の高いことで有名だが、宿(そして土地)に関する限り、その北欧でも日本の比にならないほど安い。というか、日本がクレージに高すぎるだけだろう。
 
 ここもたぶん農家なんだろうが、まだ良く分からない。なんせ宿のおばさんがけっこう正体不明で何をしてる人なんだか??
おばさん自身は「私はヒーラーよ」とのたまい、ミスターマリックのハンドパワーのような仕草をした。なんだなんだ?ヒーラーってなんだ?「ヒーリングをする人」の事なのか? ということは、ハンドパワーを使って癒してくれるの??
これは聞き捨てならないので、おばさんに申し込んで俺もあした癒してもらうことにした。今夜の内に癒してもらう心の傷を整理しとこう。うううわくわく!




8月30日 フィンランド Kiilopaan / YHA(ただ)

 「目を閉じて。これからあなたの気の流れを見てみましょう」
最初からなかなかアヤシソウ。彼女は俺の頭から足先まであらゆる箇所に手をかざしたり当てたりして俺をチェックした。そして途中から両手に小さい石ころを持たせた。そして再び触診。
 20分ほどそうしてただろうか。ハイ目を開けてと言って、彼女は俺に説明してくれた。

 「人間の体には目に見えない気の流れがあり(彼女はエネルギーと表現してた)、それが右から左へと循環しているの。これが順調に流れていることが人間の心身の健康の上で重要なのよ。」
と前置きしてから、「あなたの場合は、その流れにいくつか問題があります」と指摘した。
言われた事をかいつまむと、
とまあ大体こんな事を指摘してから、こう言った。
「今あたしが手当てしたからあなたのエネルギーは正常に循環し始めてます。これからあなたが心に持ってるものをちゃんと表現できたら、そして『〜ねばならぬ事』より『〜たい事』をやろうとしたら、この流れはどんどんよくなっていくでしょう」
 そして持たされてた石の一方を俺にくれ「これはタイガーストーン。あなたが問題の裏を洞察するのを手助けするでしょう」

北緯70度30分6秒。
今旅行の到達最北地点
そして「治療」は終わった。俺はてっきり趣味でやってるもんだと思っていたら、実は本職みたいで有料だった(200NOK)。うっ、と思ったが終わってしまってから値切るのは彼女の腕を信用していないみたいだからやめといた。結局これも合わせるとせっかく値切った宿代がもとに戻ってしまったが、本当にちゃんと治してくれたんなら安いモンだろう。
 彼女はその後しばらくして次の患者の「往診」に出かけていった。
俺は昼頃チェックアウトして、もう少しだけ北へ走り、フィヨルド海岸を見た後、南下をはじめる。そして100キロ強走ってフィンランド領へ戻り、買い物などしていた時に変な事が起こった。

 スーパーの駐車場で休憩していると、40過ぎぐらいの男が寄ってきて、「どちらから来られたんですか?」「日本からですけど」
男は失礼ですがと言いながら握手を求めてきた。俺は寒天下の走行で冷たくなった手を差し伸べた。男の手は暖かかった。
「暖かいですね」俺が言うと、男は「失礼ですが、あなたはすごいパワーを持っています」と言った。
俺「は?ナニ?」
男はもう一度「I don't know. But I feel you have much power」と繰り返し、そしてなんと俺の手を取り片膝をついてしまったのだ。
 単にはるばる日本人がバイクで旅してるのに敬意を表したのかもしれないが、男の目がそんな軽いもんじゃなかったし、今までそんなことを言われた事もされたこともない。これはやはり朝のヒーリング効果なのだろうか??

 おまけにもうしばらく走って再度休憩していると、キャンピングカーのドイツ人のおっちゃんから板チョコ一枚もらった。まあこういうのは時々あるけどね。

うーん不思議。。。首をひねりながら走っているうちに暗くなりはじめ、適当にユースの看板に従ってチェックイン。部屋は満室だったが、30人ぐらい泊まれそうなドミトリーに無料で泊まれた。こんなのもあるのね。


8月31日 フィンランド Oulu/Hotel Apollo(390FIM)

ただひたすら走る。歌いながら走る。一日の走行距離が今旅行はじめて500キロを超えました。
走りすぎて暗くなり、宿見つからず、やむなく久々のビジネスホテルへ不時着。
値段は高いが(日本のビジネスホテルと同じぐらいか)ツインの部屋で、広いしなかなかよいよい。
なんといっても部屋にサウナがあるのが高得点です。さすがフィンランド!


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