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6月1日 イングランド Cheltenham / Wyastone Hotel (53P)

ホテルでの夕食。けっこううまいよ
マン島TTレースを観戦したい。フェリーも宿もかなり混んでるだろうから、ロンドンで予約してから現地へ向かおうと思っていた。まずはフェリーの確保だ。しかしいくつかの旅行会社にあたったがどこも扱ってない。マン島の旅行会社の電話番号を聞いて電話もしてみたのだが、何度かけてもつながらない。午前中そんなことで駈けずり回っているうちにだんだん面倒くさくなってきて、とりあえずリバプールかそこらまで走って飛び込みでフェリーをゲットすることに方針変更。宿は何とかなるだろう、テントもあるし。
 ということで、二時ごろロンドンを発って西へ向かう。ロンドン観光は何もしてないが、イギリス滞在の最後にもう一回寄れるだろう。

国道40号線を西にぶっ飛ばし、大学の町オックスフォードで道路地図を買い、Cheltenhamという町まで走る。ここで宿探し。今日はどうしてもネット接続したかったのでホテルだ。観光案内所は既に閉まっていたが、ドアの前に本日宿泊可能な宿の一覧を書いた紙がコピーされて置いてあったので、それをもらって適当に電話。53ポンドと日本のビジネスホテル並のホテルへ予約を入れる。
 
このホテルはかなり素晴らしい。それなりの値段なので当たり前とも言えるが、縦より横幅の方が広いふかふかのベッド、バスタブは広く、バスルームにも部屋から続いている絨毯が敷き詰められている。中にはシャンプー、入浴剤、シャワーキャップ、おしゃれな石鹸が置いてあり、ドライヤー、ズボンプレッサーまである。電話にはPCモデム用の専用ジャックがあり、至れり尽せりだ。家具やインテリアもしゃれている。ユースのたこ部屋もいいけど、たまにはこういう正統派ホテルもいいね。ゆっくりできる。

もう一つ俺がこのホテルを気に入ってる理由は、ここの人がいいからだ。このホテルは夫婦で全てをマネージしてる、いわばファミリービジネスだが、おかみさんの応対がなんとも小気味いい。こまねずみの様に走り回りながらも、常に笑顔を絶やさず、電球の交換なんかも自分でやってる。見ていてさわやかな気持ちになるよ。やっぱり人だねえ、サービス業は。


6月2日イングランド Cheltenham / Wyastone Hotel (53P)

昨夜遅くテレビで工藤夕貴の映画をやってて、けっこうしょうもなかったんだけど(オーストラリアが舞台のやつ。知ってる?)、ついつい深夜まで付き合ってしまい、その後このページをつくるお仕事をしたので、終わった頃にはすでに鳥が鳴いていた。天気も良くないし、このホテルも気に入ったから、ええいもう一泊だ。結構高いけど。

一人旅というと一見すごく孤独なように思えるが、実際はそうでもなく、けっこう人と話す機会は多い。ユースでも、キャンプ場でも、隣同士になったらすぐに話し掛けたり掛けられたり、あちこちで会話の花が咲くし、それはとても楽しいことだ。ただ出会う人ほとんど全てが初対面、かつ言葉も母国語じゃないので、こういう生活を毎日繰り返していると少々疲れがたまってくる。荷物にも常に気を配っとかないといけないしね。こういう時に個室のいいホテルに泊まると実に気持ちよく過ごせる。ちょうど今みたいに。部屋でうたた寝したり、庭に出てぶらぶら散歩したり、そうしている間に、短期間に大量の情報が流れ込んで熱くなっている頭がクールダウンされていくような気がするよ。

ウーン・・・
町の観光パンフレットを見ると、表紙が"Cheltenham Spa"なっていた。ホテルの女将さんに、「この町には温泉があるの?」ときくと、「そうなのよ。ここはSpa Townなのよ」
そう聞いてじっとしている訳にはいかない。温泉好きの俺は、いそいそと支度をはじめる。タオルに着替えに、そうかこの国では多分フルチンで入浴する習慣はないだろうから、海パンもいるな。
 
 準備を整え出発、30分歩けば目指す温泉"Pittville Pump Room"が見つかった。外観はいかめしい大理石の建物、ローマの古浴場を連想させる。
 中に入ると、Spaはこちら、という表示があり、それに従って歩を進める。と、大きな宴会場みたいなところに出た。ン?通路を間違ったかな?と思い、そばにいた従業員らしきおっちゃんに「温泉はどこだい?」と聞くと、「それだよ」とすぐそば壁の方を指差す。??何??
 
わけも分からずとりあえず壁の方へ向かって歩くと、壁のすぐ傍にしょぼい給水機がある。「飲んでみな、体にいいよ」「こ、これが温泉(hotspring)?」と俺。「いや、ホットじゃないよ。地下から汲み上げてるんだ」
 
 ここで全てが判明した。この町のSpaとは、飲用鉱泉だったんだ。ガクッ。
 1800何年から続いている由緒あるSPAだとかなんとか書いてあるが、それにしても、ただこれだけのモノをあげつらって、よく堂々と「SPAの町」などと謳えるなあ。ためしに飲んでみたら、ナトリウム系の泉質なんだろう、すこししょっぱい。まあ体にはいいんだろう。
外に出て、人待ちしてる地元の女の子に「ここのSPA、なかなかいけるね」と言ってみたら、「冗談でしょ、ひどいもんだわよ(horrable)」と思いっきり渋面で答えてくれたのが愉快だった。



6月3日イングランド Liverpool / Dolby Hotel (34P)

さっそくイングリッシュ・ウェザーが出迎えてくれた。昼出発した時は曇りだったんだけど、走り出したらしばらくして霧雨が、そしてさらに走ると本降りとなった。しかも寒い。手袋と靴はぐちょぐちょだし、首からも雨が入ってきて気持ち悪い事この上ない。先日買ったばかりのイギリス地図も早くもびしょびしょ。寒さで筋肉は硬直してくるし、ほとんど何も考えずマシンの一部となってリバプールを目指した。京都のある禅寺に「吹禅」なる文句を掲げてあったのを見たことがあるが(多分ただひたすら尺八を吹くことで禅の道を極めるという意味だろう)、今日の俺はさしずめ「走り禅」または「乗り禅」とでも言うべきか。
雨の時は最悪のバイク旅行だが、距離的には雨の方が稼げたりする。なぜなら雨の時には景色も見えないし、
濡れて凍えてリバプールへ到着
止まって写真を撮ったり道草を食ったりせず、ただひたすら走ることに徹するから。できるだけ早く宿にありついて熱い風呂かシャワーで温まりたいからね。と言う事で今日も比較的短い時間で200km以上走り、5時過ぎにはリバプールへ着いていた。

早く宿を探して服を脱ぎたかったんだが、その前にやっとかないといけない事がある。現在TTバイクレースが開催されているマン島フェリーのチケット入手だ。降り続く雨の中、フェリー乗り場を探しまた走る。幸い乗場は町の真ん中にありすぐ見つかった。
 それにしてもものすごい数のバイクやんか。キャンセル待ちをしてる人もかなり多く、こんな状況ではチケット入手は無理なんちゃうん?その辺のバイカーに情報を聞いてまわるが、結構国外からはるばる来てる人が多くあんまり良くわかってないようだ。ただし日本のナンバーは俺以外いなかったが。オフ車も見なかったな。

何はともあれ窓口で状況を尋ねて見ようとバイカーの人ごみの中をかきわけカウンターのお姉ちゃんに「キャンセル待ちせんと一番早く取れるチケットは何日どすか?」と聞くと、なんと「明日の夕方8時なら取れおす」と答える。まさかレース期間中にキャンセル待ちせずチケットが取れるとは思ってなかったから意外な気がしたが、ともかくこれは嬉しい誤算だ。そのチケットとレース後にマン島から北アイルランドのベルファストへ抜けるチケットを買い(合計175ポンド)、とりあえずマン島への足は確保したわけだ。次は宿だが、渡ってしまえばなんとかなるだろう。テントもある事だしね。


6月4日 マン島(U.K.) /  Dauglas フェリー乗り場 (構内野宿・無料)
 
朝ホテルのテレビを見てたら、「ゴレンジャー」そっくりの子供向けテレビ番組をやってたぞ。其の名も「パワー・レンジャーズ」。五人が色違いのコスチュームを身にまとい、悪の化身と戦う。ストーリーの展開や、悪玉の組織構成もほぼ同じである(実際戦う悪玉とそれを取り巻く多数の雑魚悪玉、そして悪玉をコントロールする悪のヘッドクウォーターが巨大宇宙船に乗っている。悪玉はここで指令を受けたり、作戦失敗の責任を糾弾されたりするわけだ)。
どう考えてもゴレンジャーのパクリだとしか思えない。そして悪玉はなぜか東洋系だ。今日の悪玉は歌舞伎役者のお化けみたいなのだったし(腰には日本刀が差されていた。結局一回も抜かなかったけどね)、来週の予告編をちらっと見たら、虚無僧みたいなのが巻物になったお経を投げつけるという荒業をパワーレンジャーズに仕掛けてたぞ。なかなか面白かったのでずっと見てたらまた出発が昼頃になってしまった。

乗船直前の状況
マン島行きフェリーは夕方8時なので、それまでリバプール市内をぶらぶらする。ビートルズゆかりの地とかね。と言っても歩いたのはほんの暫くで、あとはパブでFish&Chipsを食いビールを飲んでいた。そしてフェリーに乗ってからもビール三昧。こっちはタバコは高いが(マルボロライト4.3ポンド)、ビールは比較的安い(パブで1パイント2ポンドぐらいからあったと思う)。Bitterという種類の、色が濃くて香ばしいビールを気に入ってよく飲んでいる。

マン島に着いたのは夜11時。さすがにこの時期のイギリスでも既に暗くなっている。キャンプ場をさがすつもりでいたが、結構寒いし暗いので見つけるのに苦労しそうだったから、そのままフェリーポートの待合室みたいな所に野宿。すでに何人か寝てることだしたぶん問題ないだろう。たまたま子供の遊び用のジャングルジムの下の部分がトンネルのようになっているのを見つけ、覗き込むと寝るのにちょうどいい按配のスペースになっている。ちょうどカプセルホテルのような感じた。そこに荷物を全部引き込み、寝袋を出してお休みタイム。レース期間中で警備員も沢山おり、考えれば変なホテルより安心かもしれない。寝心地、セキュリティともに十分合格ラインだ。


6月5日 マン島(U.K.) /  Dauglas  ・Sara&Graeme家ホームステイ(16P)

TTレース。Ramseyコーナーにて
「ほらほら兄ちゃんたち、もう朝だよ。早く起きな、ここはホテルじゃないんだから!」
という警備のおっちゃんの声で目を覚ます。うーん快眠だ。警備のおっちゃんもこのレース期間だけは多めに見てくれてるのか、起きろとは言うものの、それを無視して寝込んでいるやつを無理してたたき起こそうとはしない。ただ俺はそこまで神経が図太くないので、そのまま荷物を纏めて即席カプセルホテルを「チェックアウト」。一足先にエアで現地入りしているYUKKYのステイ先に電話を入れた。

YUKKYこと小林ゆきさんは"RacingとTouring"をテーマに世界を股にかけて活動するフリーランスのライター&ライダー。レーサーとしても、カワサキニンジャを自在に操り数々の輝かしい成績を残している。ひょっとしたら日本の女性ライダーで一番速いかもしれないな。しかし実際会うととても華奢で穏やかな女性で、どこからそんなパワーが引き出されてくるのかよくわからない、不思議な魅力を持った女性である。その彼女が、仕事でマン島に来た。

電話で彼女が言うには、ステイ先に空きベッドがあるらしい。ホストのSARAさんに確認すると、とりあえず水曜日まで向こう3日間のベッドは確保できるというのでその場で予約を入れて、そのまま宿に向かった。約5分で到着。Saraさん、だんなのGraemeさんともとても人がよさそうで、着いていきなり朝食を出してくれた。

すごいおばあさんは家も素晴らしかった。
朝飯後さっそくレース観戦に出かける。YUKKYを後ろに乗せステイ先のダグラスから20キロほど離れたRamseyという観戦ポイントへ行く。ちなみにマン島TTレースというのは古い歴史をもつオートバイ最高峰のレースの一つであるらしい。よく知らないが。公道で行われることも特徴的である。

濃い霧のためレース開始が遅れ、寒空の下約5時間ほど待たされたが3時ごろようやくスタート。YUKKYはプレスとして来ているのでコース内で写真撮影。俺は人ごみの中、始めてのバイクレースを興奮しながら観戦した。今日のレースは250ccと400cc、サイドカー、そしてクラシックバイクのパレードも見た。

レース見学後、YUKKYの知りあいのおばあさんの家に挨拶に行く。「レディーホワイト」と呼ばれるその人は、なかなか楽しいおばあさんだったが、実はかなりえらい人で、TTレースのマーシャルを40年程続けたのでエリザベス女王からMBEと言う勲章をもらっている。おばあさんはあたかもYUKKYの到着を待ちかねてたかのように、サンドイッチやお菓子を振舞ってくれた。


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